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クエスト名「Tithes And Tribulations」
Hoarfrost城を死者の軍団から解放して三日後、執事のIgnatius Essaganは修復の完了した城門前で迎えた。 「これはこれは主様!良い知らせがございます。城の修繕は目出度く終わりました!いつでも私たちはお引っ越しできますぞ。私は貴女様のお帰りをお待ちしていただけですが」 「ご苦労様。何かあった?」 「城の修繕中、少々やきもきしました。あの連中は私にも作業を見せてくれないのですよ、まったく。それで私、その間に城の詳細を書き留めさせて頂きました。これでございます。お受け取りを。時間のあるときにでもお読み下さい」 「ありがとう、読ませて貰う」 「滅相もない。では、正式に貴女様をHoarfrost城にお迎えさせて頂きましょう。貴女様は城と周囲一帯がご自身のものと充分ご承知下さい。今よりは貴女様の領地でございます、全て!」 「ホールで炉が轟々と燃えてますがご心配なく。城を暖めております。よろしければ後で私のところへお越し下さい。城の改善に関して相談事がいろいろございますので。ホールか東棟にある私の部屋を探して頂ければよろしいかと。城をもう一度修復出来たことに感謝を。前にも申しましたが、決して失望はさせません」 Ignatiusは丁重な挨拶を残して自室のある東ウィングへ入り、私は城内の物見遊山で中央広間へと向かった。 Hoarfrost城は広大な敷地を持つが、住める場所は比較的狭い。勿論、城に相応しい施設を揃えるし間取りのスペースも余裕を持たせてある。ただBattlehorn城やShivering島のパレスが持ついかにも領主然とした壮麗さがない。上品で枯れた館という印象を受けた。 「あのメモのことでございますが、えぇ私がお渡した城の仕様についての、もう読まれましたがどうか…」 同じ執事でも“世の中全てが他人事”なHasKillとは大違い。どちらもマイペースの権化のような人物だがIgnatiusは饒舌でクドく、一を十にして語る。彼の寄こした『Hoarfrost城のススメ:城郭と周辺環境』は、城の付帯設備の説明と現状それに未来の提言を含む。メモと呼ぶには大作だ。ディナーの折、彼は早速それを持ち出してきた。 「目は通したわよ」 「貴女様が携わる一連の責務、つまり城の改善に関してでございますが、私のほうからご用意させて頂きました。ですがご安心を。一つずつ片づけていけばよろしいのですから。とにかくまずはこれです。何はなくとも私どもに必要なのです、現実的に」 「何?」 「城の警護と使用人、その他モロモロが必要という意味ではありますが、えぇまぁ、お金でございますな。遺憾なことに、修繕の支払いで城の資産はほぼ底をつきました。ですが、それはこれまでほど酷い状況ではございません。歴史的にみますと、Hoarfrost城は十分の一税を財源にしておりましたし」 十分の一税は一般的に教会が徴収している税金のこと。“天の恵みの10%は神のもの”だったかしら。神へ感謝して収穫の一割を“自発的に”寄付する。Ignatiusが言ってるのは単純に所場代を払えってヤツのほう。城の周辺の山々には農地が点在している。前の城主は安全保障を条件に農民から税を徴収していたそうだ。城に人手が無いのはIgnatiusも気に掛けているところで、メモに書かれた最初の項目でガードの雇用を挙げている。で、ここが問題なんだが。兵を雇うには資金が必要で、税収を得るには兵が必要になる。Ignatiusは城の収支を釣り合うものにすべきと考えており、つまり私のポケットマネーをアテにする気がない。そこで兵はいないが、前城主の死亡に伴い滞ってる税収を再開すべく農民側を説得しろと極めて政治色の強い“提言”をしてきた。 さようで、と当たり前のようにIgnatiusは頷いた。 「新たな城主として、城の庇護に置かれる者たちの代表とお話する必要がございます。Inwold Mannickと」 「Inwold Mannick?」 「我々の助けを必要とする近隣集落のうちの誰かとなれば、訪ねるのは彼がよろしいかと存じます。皆に十分の一税の再開を頼む前に。もしも彼らが助けを必要とする事態になったら、多分貴女様ご自身で行かれることになりましょう。嘆かわしいことです、申しましたとおり…ですが、私どもが再び城を運営するには致し方ありません。私は貴女様がお会いになられると確信しております。いつでも都合のよろしい時にMannickをお訪ね下さい。実は彼の農場は叫べば聞こえるぐらいの場所、南東の方角にあります。まぁ、そんなわけで彼が代表に選ばれたのではないかと、単純に彼が城に最も近い場所に住んでおりますゆえ。…少々気になることがございますが」 「ん?」 「いつでしたか、私が城門前で日々を送っていた際、Mannickが助けを求めて叫んでいたのを聞いた憶えがあります。随分と取り乱していたようで…勿論、私の聞いた声が彼のものであればですが。私、調べようにも城を離れるわけにもまいりませんでしたし、まぁその…お急ぎになったほうがよろしいかもしれませんな。貴女様におまかせします、えぇ」 どう考えても、交渉事は私よりこの老執事のほうが向いてるように思うが。 「何かようか?誰だ、アンタ?いや、気にするな。俺に用はない。頼むから、ほっといてくれ」 挨拶もなし。随分と社交性に欠ける男ね。これで代表が務まるのかしら。 「初めまして。私が城の新しいオーナー、ご機嫌いかが?」 「何?…前のCallonusはどうしたんだ?」 「へ?」 何故かInwold Mannickは前城主の訃報を知らなかった。 「死んだ?マジかよ?なんってこった、丘の上じゃ何やってやがるんだ?妻が…俺のAnnieが…喉が枯れるまで叫んだってのに、知ってるか?彼奴らが来て彼女を連れ去った時だ。掠れた声で城に助けを求めて叫んだ。ここからでも声が崖上の警備兵に聞こえる、俺は知ってるんだぞ!くそったれめ、無視しやがって、金だけ取って無視しやがったんだって」 「…兵はもういなかったのよ」 「あぁ、だな…みんな死んじまったんじゃな。責めるわけにはいかねぇよ。どうしようもねぇ、究極の弁解だ、死は」 「…何があったの?」 「みんなお前は何してたんだって目でみる…俺に何が出来る?俺はただの農夫なんだ!」 激高と落胆を交え、InwoldはIgnatiusが耳にした叫びが何であったのか語った。 Inwoldの農場は度々怪物に襲われ羊や作物に被害を受ける。Hoarfrost城が死者に占拠されている間にも襲撃は続き、ある日妻のAnnieが近くの洞窟へ連れ去られる事件が起きた。Inwoldは城に救援を求め声を限りに叫んだが届くことはなく、自らの手で助けに向かった。だが、農夫の彼に妻を救出することは叶わず、半殺しに合って逃走。すでに時間が経過しており妻の安否は絶望的、今も怪物の狼藉を手を拱いて見ているしかない。 「…」 「最早Hoarfrostの名は信頼するに値せん。文句が言えるか、アンタは?但し、あの獣どもを止めてくれるなら、それなら別だ…皆と話し合ってもいい」 「怪物の住処は?」 「あの不気味な化け物どもはGlowing Tunnelsを抜けてくる。ここの東、山奥のどこか、誰も場所は知らんだろ。俺が知ってるのはガキの時分に格好の遊び場にしてたからだ。アホだったな、悪ガキが洞窟は俺様のモノだと夢みてたんだ。罠まで仕掛けたよ、何ヶ月も掛けて。一箇所細くなった通路で崩れる。“敵”から護る為に」 「その罠は使わなかったの?」 ガキの遊びさとInwoldは苦い顔で唇を歪めた。 「俺は実際に罠が必要になるなんて思ってなかったんだ。敵がいるなんて。罠は出来上がったが、怪物が現れて俺は追い出された。その日から城の衛兵がいつも俺たちを護ってくれた。誰にも罠の話をする気が起きなくて…俺が言わなかったせいで、失うものはもう何も無くなっちまったがな、本当に」 Inwoldは子供じみた遊びを知られるのが嫌で罠を仕掛けたことをガードに伝えず、それが妻を失う結果になったと後悔している。誰にも自分と同じ悲劇を味合わせたくない、罠は効果がある、洞窟へ入り罠を使って封鎖して欲しい。それが周辺住民と税の支払いを交渉する条件だと言って、鍵を取りだしてきた。応急処置で洞窟の入口に鍵が掛けてあるそうだ。 “助けて!奧に連れこまれる! Annelie Mannick” 血文字だわ、これ。Annelie…Inwoldの奥さん? 細い通路の先に扉がある。まさか、Annieは生きてるのか? 「た、助けて…助けて下さい!そこの貴女!どうか私を出して下さいませんか?大きな野獣が洞窟にいて、それが私をここに閉じこめたんです!」 「静かに。Annelie Mannickね、貴女が」 「はい、私です。…何故、知ってるの?」 「メモを拾った。Inwoldに頼まれてる」 「夫が貴女を送った、私を捜しに?彼は無事なの?教えて、彼は大丈夫なの!?」 夫の名を出すとAnnelieは鉄格子にしがみついた。 「心配しないで、元気よ」 Annieは大きく息を吐き出し、「良かった」と呟いた。 「あぁ…本当に良かった…それを聞いて安心しました、分かります?あの怪物たちが襲ってきて、彼が倒れるのを見たの、でも…」 「ちょっと待って」 鉄格子を調べてみる。鍵が掛かってるけど、魔法で簡単に解錠できるな。 「お願いします。ここから出して、あの人のところへ連れていって下さい。もうどのくらいここにいるのか…」 突然声が震えだし、彼女は叫んだ。 「あぁ、駄目…獣が来た!後ろです!!」 Annieの声はまだ震えている。鉄格子の脇にもたれかかるMinotaurの骸に決して目を向けようとはしない。 「頑丈な奴だったけど、もう死んでる。見てご覧なさい」 ゆっくりを視線を下げ、ピクリともしないミノ助に安心すると再び大きな溜息をついた。 「あぁ、ありがとう!そいつが私を閉じこめていたの…その、どうしてこんなにずっとか…分からないのだけれど。でも知らずにすんでよかった」 何故彼女は殺されなかったのか?本人ならずとも不思議ではあるが、知ったところで楽しい理由でもあるまい。私も知りたいとは思わない。 「お願いです、Inwoldのもとに連れて行ってください。私一人では出られません。彼もきっと心配で気が気でないでしょうし」 亭主のほうはすでに亡くなったものと諦めてる…とは、さすがに言えない。 「ついてきて」 Mannick夫人の生還という喜ばしい土産が出来た。これで失った希望の火が再びInwoldの胸にも宿る。その前にだ。 Inwoldの罠、紐を引っ張ると派手な鳴動と共に天井が崩れ落ち、細い洞窟は沢山の岩で埋まった。いかに力自慢のOgreやMinotaurでもこれを抜くことは出来ない。後は入口近くに残る怪物たちを掃除すれば農場は安泰。 と思ったけど、結果はさほど変わらなかった。 農場に飛び込んで亭主の姿を眼にしたAnnieのテンションは滑るように上っていくが、寝起きらしいInwoldはパンをくわえて、ただ目をパチクリさせるだけだった。食べかけのパンを投げ捨てて妻を抱くなんてシナリオにはならないわけで、現実はこんなもんだ。 ようやく状況を把握したInwoldは両の眼に涙をいっぱいに溜めて嗚咽した。 「良かったわね」 「しかも洞窟を塞いで、怪物が通れなくしてくれた!俺はもう感謝の言葉もない!皆にアンタがしてくれたことを話す、きっと又税を払うようになるさ、俺に任せろ。必要ならなんでも俺に言ってくれ、遠慮なんかするな!」 「えぇ、ありがとう」 最初のつっけんどんぶりは何処へやら。Inwoldは感涙にむせび、妻の顔を眺めては一人頷きながら、周辺農場との交渉役を買って出てくれた。 Sheogorathの言葉を思い出す。“民は国の屋台骨”。放蕩の限りを尽くしてる暇神が、こと領民に関しては大真面目に私を説教したっけ。時に忘れそうになるけど、主従は一方通行の奉仕にあらず。民を護るは主の責務、領主は愛されてナンボだ。肝に銘じよう。 うん、ちょっとあの山城が好きになってきたな。
by yamanobe26
| 2008-05-11 15:18
| Oblivion日記MOD編
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