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クエスト名『Into the Pitt(後編)』
かつて強制収容所とは共産圏の暗部でありましたが、自由を謳う国家の末裔が恥ることなくそれを作ってしまうのだから変われば変わるもの。 まともな武器があったら残らず血祭りにあげてやるのに…そんなバイオレンスな衝動に駆られるのは、私がWastelandの流儀に染まってしまったせいなのか。 「ファミリー?奴隷が?」 奴隷の一人、車の外装を焼き切るのに余念のない男の名はAdan。彼はうんにゃ、と首を振った。 「我々はそうありたいと願ってるんだ。前に本を拾った、図書館の近くで。Mideaがちらっと読んでくれた。曰く“良き旅人は計画を持たず、何処かへ辿り着く気もない”」 人生とは旅であり、気ままである。ありがたくも中国は老子のお言葉だ。 「それは自由になれって意味だが、俺はそうじゃない。難しいのはそれにしがみつけばつくほど動けなくなる自分が惨めに思えてくるってこと。そして、この仕事はとびきり惨めでないと務まらない。そんなわけで、仕事の邪魔をしないでくれるとありがたい」 奴隷とは苦行者か。 全部が全部、奴隷の皆さんがAdan青年のように達観してるかどうかはさておき。彼らの職場、Downtown最大の施設が製鉄所。 WastelandはVaultも含め、極めて静的な世界。Pittはまるで違う。人と機械が休むことなくダイナミックに鉄を作り出す姿を目の当たりにすれば、思わず感嘆の呟きが漏れようというもの。Oasisとは別の意味で失われた過去が此処にある。 「とっとと起きろ!クズが!」 「あぅ!」 金物の喧騒に紛れてドスっと柔らかい音が鳴った。 「いいだろ。少し寝かせてやる。だが、戻った時に石炭をくべてなきゃ、おめぇは死ぬぞ」 もう一度監視の女が脇腹に蹴りを入れ、蹴られた男は丸まって動かなくなった。 性根が腐ってるのもそのはずで監視の正体は…驚く無かれ、なんとRaiderなのだ。Pittの支配者Ashurは奴隷の買い付けのほか、廃墟に蛆湧く賊を雇い入れている。狼に羊の番が務まるのか甚だ疑問だが、そもそもアナーキストが番犬に甘んじるとは嘆かわしい。退かぬ、媚びぬ、顧みぬ、アル中・薬中揃いのWasteland Raiderのほうがよほど気骨がある。 製鉄所はDowntownから街の他のブロック、SteelyardやUptouwnへ繋がるジャンクションでもある。但し、何処も鍵が下りていて抜けられなかった。奴隷の行動はDowntownに制限されている。私も身動きがとれないから、ここは素直に彼女を頼るべし。 「…扉の前に立つのは止めてくれませんか」 Pittの住人は思いやりの心に欠ける。ノックしてドアを開けた途端にMideaが話しかけてきた。こちらはそれで酷い目にあったばかり。心臓に悪い。 室内は落ちた瓦礫で半分埋まり、片隅に安っぽいテーブルとベッドがあるだけ。お堅い文明の香が残るジャンク、壊れた時計や端末、電話等が僅かに飾ってあり、それが彼女の人となりを垣間見せた。 「貴女をAshurのパレスに送り込むプランはあるの。ただ、今すぐにとはいかない。しばらくは大人しくしていて。途中、何を見てきたかは知らないけど、警備の者はボサッと突っ立ってる奴隷を快く思ってない、冗談抜きでね。忙しそうにしてないと、すぐに嗅ぎつけられる。休んでばかりいると此処の者ではないとばれるわよ」 あらま。結局、足止めか。 「持てあますほど暇でもないんですが…とりあえず、何をしてれば?」 「製鉄所の外に鉄の塊がゴロゴロしてる。よく現場監督がそれを集めてくるよう指示を出すわ。死にに行けと言ってるようなものだけど」 「どういう意味です?」 「連中は誰も指名したりしない。私たち自身に選ばせるのよ。最低の豚野郎!」 Mideaは強く吐き捨てた。 内紛工作かしら。奴隷たちが団結しないよう諍いの種を植え付けてるのか、Raiderが勝手にやってるのか。どちらにせよ、Ashurって男は外道ですな。 「何が危険なんです?外はSuper Mutantが占拠中とか?」 「何よそれ、Mutantのスーパーマン?あぁ、忘れて。何の話か分からないけど違うわ。Trogよ、一杯いる」 Pittではその名をよく聞く。特に監視連中から。 「…彼らは私たちが決して成りたくないもの。汚染が殆どの者を蝕んでいる」 「例の疫病?」 「多くの者にとっては癌みたいなものよ。無害の時もあれば、そうでない場合も。人によっては正気を奪われることがあるし…」 「突然変異?」 彼女の言う無害とは単純に死亡するという意味だ。そうでない場合、Pittでは奴隷、監視を問わずGhoul化の兆候を持つ者を頻繁に見る。 「例え死を免れても、姿が変わる。獣になるわ、歪な、人でないモノに。可愛いくはないわよ」 「…でしょうね。武器はありませんか?弾だけでもいい」 「そっち方面は力になれないの。他を頼るしかない。製鉄所でMarcoにあたってみて。そこらの道具を武器にしてる。あとSteelyardに“お頭”の死体が一つある、銃が見つかるかも…」 その時、力任せにドアを開いて鴨が葱を背負ってきた。 銃をこれ見よがしに構える監視の詰問にMideaが青ざめた顔で取り繕った。 「別に何も…何でも…ありません。この新入りに現場監督の指示を伝えていただけです」 「ほう、そうか?ならこの女がSteelyardに入るってのか?」 「はい。何をすれば良いのか教えました。彼女も分かってます。塊10個、すぐに集めますから」 「そうかぁ、ならもうさよならは済ませたな?ハハハハ!よぉし、遊びの時間は終わりだ。仕事へ行きな、アリンコども…」 弱い者イジメに満足したのか、男は銃を降ろして外へと脚を向けた。 「私の住んでるとこじゃこれで普通なんですよ」 サブマシンガンをゲット、Raiderの所持品にしては状態も悪くない、なんとか使えそう。弾も僅かながら手に入った。 「時間が出来たところで…質問があります」 「何?」 「Mideaさん、生まれは?」 「私のこと?ここで生まれた。多分、ここで死ぬでしょう。ずっとAshurに踏みにじられて生きてきた。いつの日かテーブルを回すことができれば、ただそれだけを考えて生き続けてる」 「時々…本当に時々ね、ここにAshurがいるのはまだマシなんじゃないかと思うときがある」 「Cureって何です?」 私に盗み出せと言ったWernherはそれが疫病の治療法としか話さなかった。薬なのか、処方・処置を記した書類なのか、データ化されたホロテープなのか。Mideaの答えはそのいずれとも違っていた。 「疫病を治療するための鍵よ。私を見て。私たちは皆、冒されている。更にこの酷い環境での強制労働が悪化を招いてる。人々は以前よりも増して急速にTrogになりつつある。Cureはね…この場所で感染を免れた最初のモノなの」 「最初のモノ…?」 「警備に知られる前に出て行って」 彼女もまた曖昧な言葉で濁し、自室に錆色の染みを付けた来客を追い出した。 「はぁ?」 部屋を出てすぐ、路地で奴隷の女と鉢合わせした。一際Ghoul化が進んだ顔を曇らせ、彼女は誰かを捜していた。 「私の友達…とても仲のいい。ずっと製鉄所で一緒だった。先週、私たちがSteelyardから鉄の延べ棒を集めることを強制されたの。Billが志願して…」 彼は戻って来なかったと、その奴隷の女Millyは俯いた。 「彼、誰にも死んで欲しくなくて。でも…Billは生きてる、死ぬなんてありえない。貴女、腕に自信がありそう。彼を見つけて連れ帰って貰えないかな?」 「探してみます」 「ありがとう。あぁ…でも、気を付けてね。誰かが自分のために怪我をするような事があれば、Billは自分を許さないと思う」 Millyが恋人の安否を気遣う様は人間として自然だ。PittではGhoul化したものは怪物扱いされ、Trog“徘徊者”と呼ばれる。彼らの悲劇はそこで終わらず、更におぞましい結末が待っている。 「ご期待に添えるよう頑張らせて頂きます」 「少しは骨のあるのが来たようだな、今回は。いいだろ、ついてこい」 現場監督はEverettという男で、年配のRaider。身体に変異の兆候が現れており、古株と思われる。趣味は恫喝だ。 「彼奴らから生きのびたとしても、炉の上に住んでるキ印どもがお迎えしてくれる。いいか?俺を助けると思ってドアの側で死んでくれよ。そうすりゃ、死体のお前を漁るのに遠出しないで…」 尚も脅しに掛かるEverettの雑言を軽く聞き流し、檻が並ぶ通路と扉を抜けてSteelyardへ脚を踏み入れた。
by yamanobe26
| 2009-11-04 19:29
| Fallout3日記
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