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クエスト名『Stealing Independence(後編)』
私はこれまで罠というものは解除・回避してナンボであると思っていた。Jamesだって危険を察すれば逃げる。なのにだ。動物界・脊索動物門・脊椎動物亜門・哺乳綱・霊長目・真猿亜目・狭鼻下目・ヒト上科・ヒト科・ヒト属・ヒト種に属するHomo sapiensに中に、よもや罠を危険と認識しない生き物がいるとは知らなんだ。 懲りないというか学習しないというか。国立公文書館で済し崩し的にペアを組むことになった盗掘屋、Sydneyはまたもや炎に撒かれてのたうち回った。公文書館の地下施設はガス漏れが多発しており、このアホ女は省みることなくサブマシンガンをぶちかます。私なぞ嫁入り前のこの身に火傷はおろかカスリ傷だって付けるのはご免だが、彼女ときたら、まるで死ななきゃ問題ないと言わんばかりに気にも留めないのだ。かと言って不死身ではないから、床に焦げ跡を残すたびに治療薬を浪費する。拠出するのは私だ。大概にして貰いたい。 建物の構造を把握するSydneyの支持に従い…と言っても。彼女のアドバイスは性格を反映して大雑把であるし、指が軽いので警備ロボットを次々と呼び寄せる。近道しようが遠回りをしようが手間においては大差ない。ぶっちゃけ、総当たり殲滅戦である。 「教育上の配慮だ」 みんな大好き○ンパンマンが無言で殴りつけてみろ。文部科学省と全国のPTAからクレームがくるわ。 とにかく、この女はガイド役として最低だ。一応もっともらしい台詞を喋ってくれるが、言ってる本人からしてそれを率先しない。万事が万事この調子で、飽きるほどに廃墟を制覇してきたと豪語するのだから恐れ入る、冗談抜きで。 本来、ロボット相手に実弾兵器は分が悪い。腕もさることながら、Sydneyが有効なダメージを与えられるのは彼女が携帯するサブマシンガンによるところが大きい。見た目はそこらに転がってるポンコツと同じでも段違いの威力・装弾数。SentryBotを押し返すほどのパワーは戦慄すら覚える。 彼女は自慢げに鼻をならした。 「寂しい夜だな」 「コスプレ女に言われたくないぞ。私の父は弾薬職人だった。銃の仕組みも全部教わった。暇なときはコイツをいじるのが趣味と言えば趣味だ」 「…父親?」 「何よ、アンタにだっているでしょ?蜘蛛男の格好でもしてるか?」 フム、蜘蛛男には老いすぎだ。 「蝙蝠男なら似合うかもしれぬ。髭面ではあるが」 想像して吹き出しそうになったが、先にSydneyがゲラゲラと笑った。 最下層は金庫室が複数ある。大量のエネルギーセルの他、金庫の一つに巻かれた文書が保管されていた。 「違う。Bill of Rights、権利章典のコピーだな」 「権利章典?」 「イギリスの憲法。君臨すれども統治せず」 「はぁ?」 Sydneyは歴史に疎い。彼女は植民地だったこの国がいかなる経緯で独立を勝ち取ったのか、まるで知らなかった。地上には真っ当な教育機関がないから知らなくて当然で、知りたくとも知る術は限られている。 探しているお宝、アメリカ独立宣言についてもこの程度の認識だ。国民性とは何であるのか、つくづく考えさせられる。 「縦2.5フィート、横2フィート、56の署名が入った羊皮紙。Button Gwinnettはジョージア代表で署名者の一人。独立宣言の一年後、決闘で死んだ」 時折、思い出したようにスピーカーから自称Gwinnettの演説が流れてくる。独立戦争のラジオドラマのようだけど。“建国の父”の一人、Button Gwinnettは軍の指揮を執ることに拘りを持っていたが、政治活動に追われ、実際に軍を率いる機会はそうなかったはず。 「…そうなのか?」 「そうなの」 他の金庫室からはMagna Carta、大憲章の写しが出てきた。権利章典共々、英国の王権を制限しアメリカの独立を後押しすることになった歴史文書だ。 この時代の大英帝国は議会と王族諸派の血で血を洗う熾烈な権力闘争の真っ直中である。海を跨いだお隣フランスのブルボン王朝が王権神授説を唱え栄誉を極める中、イギリスの玉座と言えば1215年に制定された大憲章により王と言えども法の下にあると明文化されてしまい、名誉革命の勝利宣言“臣民の権利と自由を宣言し、王位の継承を定めるための法”すなわち権利章典により即位相続に至るまで議会のコントロールを受けることになってビール樽の底に沈んだ。これを拾い上げたのが独立戦争の仇敵にして清貧、誠実をモットーとする農夫王George三世、その人。 倹約の大家であったGeorge三世は立憲君主制を逆手にとって積極的に政治に介入し、議員を買収して議会を牛耳った。産業革命の推進や七年戦争によるカナダの奪取など、かくもイギリス本国に貢献した王でありながら、植民地には冷たいことこの上ない。既に本国人口の三分の一にまで迫っていたアメリカの植民地に重税を敷き、議会での発言権も与えなかった。七年戦争のツケをとことんアメリカに払わせる為に手を変え品を変え、ありとあらゆるものに課税し、耐えかねたアメリカは民兵を組織、1775年4月レキシントンとコンコードで蜂起し独立戦争の口火を切る。 独立戦争のドラマも佳境を迎えたようだ。押し寄せるイギリス軍を迎え撃つジョージア州選出議員Button Gwinnettの運命やいかに。 「準備はいい?」と確認をとると、Sydneyは軽く頷いて返した。私たちが立っているのは大金庫室の前。扉に向こうに独立宣言書がある。オマケはSentryBotと複数のレーザー砲台あたり。 「…」 『ふ!ふ!ふ!私も有名になったものだ。良い。そうであれば私を侮ることは出来まい。私の祖国に対する忠誠は伝説となっているであろうからな!』 ロココ調のウィッグを被る奇妙なProtectronはボディを揺すって笑った。 「…なんだ、この玉蜀黍頭は?」 「ラジオドラマの主役」 「あの放送、コイツが流してたのか?」 『貴殿等の腕が私に勝るのは承知。だが、必要とあらば私は決闘も辞さない!剣か?銃か?何を選…(ブチン)』 大時代的な台詞回しが唐突に途絶え、機械的な音声に取って代わった。 "…Standby. Rebooting program. Command structure reset..." 「リセットコードを送り込んだ。放っておけば再起動する…駄目だな、アクセス制限が掛けてある」 大金庫室にある二つの扉はどちらも堅牢に旋錠されていて、私の手には負えない。解除出来る端末の管理者は再起動中のビア樽だ。アクセス権を得るには彼に許可させるか、リンクを解除するか。さて、どうしたものか… 「説得する」 Sydneyの提案通り、壊してしまうのが一番手っ取り早い。でも、彼女はトリガーを引こうとしなかった。 "Function 2、Button Gwinnettを演じ、独立宣言の再現劇に参加する" "Function 3、国立公文書館所蔵の資産に対する違法行為又は脅威が確認された場合、セキリュティサービスを提供する" 入力待ちにあるProtectronから情報を引き出して、何故にこんな妙な芝居をやっているのかおおよそのところは判明したものの、やはり待機モードでは彼は何もしないし、出来ない。作業モードへ復帰させないと。 「私たちは金庫の中に仕舞ってある紙キレが必要なの。アクセス制限を解除して」 途端にロボットの平坦な口調が変わった。低い唸りと共に再び"Gwinnett"が立ち上がり、システムを乗っ取った。 『紙切れとは捨て置けぬ!第二次大陸会議の我が同志議員によって採択された教典である。それにより我々は英国王George三世の圧制から解放される。我れらの自由主義最大のシンボルなのだ!』 「それは500年も前の話」 『詰まらぬ虚偽、虚言はグレートブリテンの十八番であったな。だが、私はそのような戯れ言には屈さぬ!』 「私はアメリカ人よ」 『ふむ。貴殿は解決において流血の回避を望んでいるように見える。ならば、降伏を提案するが?約束しよう、慣習に従い王国兵に相応しい待遇を処す』 「そうじゃなくて…貴方が穴蔵に籠もってからいろいろあったの」 『説明を要求する。だが、警告しておこう。私は人手不足で悩む赤服のスパイのやり口を熟知している。憶えておくが良い』 Button=Protectronの頭脳の中では今も独立戦争の真っ直中。私たちを敵英国軍の兵士と誤認したまま、いかなる説得にも応じようとしない。残る手だては、騙すか、黙らせるか。 芝居がしたいのなら、させてやればいい。ビクリと反応した"Gwinnett"は滑稽なほど慌てて敬礼をとった。彼がThomas Jeffersonに心酔しているのは既知。先ほどまで盛んにスピーカーで流していた演説はJeffersonの受け売りだ。 『なんと!失礼いたしました!光栄の至りであります、サー!私はこの日を待ち望んでおりました!我が守備隊が閣下のお目に止まるとは僥倖!我が部下は皆、首都を奪還せよとの閣下の命令をお待ちしていたところです!つきましては文書を何処にお持ちになるのかお聞かせねがえますか?』 「新しい大統領のもとだ」 『新大統領…おぉ、星条旗よ永遠なれ!アメリカ万歳!では…戦争は終わったのですね?我らが勝利で?』 「うむ。勝利を祝おう、Button」 『戦勝…当然ですな。では、この砦おける私の任も完了したと。“アメリカに多数派による政府はない。あるのは参加する多数派による政府である”閣下のお言葉であります。アメリカ合衆国軍への奉仕は我が名誉であり、栄誉でもありました。閣下、最後のご命令を』 「休暇をとれ、Button。ゆっくりと休むがいい」 『よもや閣下よりそのようなお言葉を頂けるとは…祖国への奉仕は我が名誉であり、栄誉であります。遂に、休める時がきた。お分かりいただけますか、閣下。残った兵士たちも長く待ち望んできた休暇が遂に…』 感涙にむせぶかのようにワナワナと肩を震わせる"Gwinnett"。役者だ。 『私はこの要塞の指揮権を閣下にお返しいたします。幸運を、Mr. Jefferson…Sallyによろしくとお伝え下さい』 「な!?」 感動的なシーンを三文芝居に変える痛烈なオチを残し、Protectronはガクリと項垂れて静止した。くそ…こいつ、本当に官給品か? やりとりを全く理解していないSydneyが、からかうように私の肩を一叩いて金庫の扉へ向かった。 注)Sally…Sally Hemings。Thomas Jefferson所有の奴隷であり愛人。人間は平等と独立宣言に記しながら、Jefferson自身は人種差別主義者だった。 つまりこの大層な地下施設は、ネズミやらアヒルやらが闊歩する某巨大アミューズメントパークの地下同様、バックステージというわけ。戦前は専用Protectronが演ずる歴史上の著名人によるアトラクションが公文書館の目玉だったらしい。メンテ記録によるとButton Gwinnett役のProtectronが故障してメモリーリークを起こし、修理を待つ間に核ミサイルが降ってきた。以後、彼はButton Gwinnettと思いこんだまま200年、金庫を守ってきたのだ。…なのに、あのオチかと思うと泣けてきますね。 「待って下さい。このクイズ、景品が出るんですよ。くくく…何かなぁ」 「…アンタ、性格変わってない?」 Mentatsフルーツ味を頬張りながら、今や大多数の人間にとっては紙クズでしかない独立宣言を手に、私たちはRivet Cityへ帰還した。 保存協会へ入ると、私が予想外の人物を伴って戻った事にAbraham Washingtonは目を丸くして驚いた。 「二人…とも?」 言わんとするところを悟ったAbraham老人はカラカラと笑った。 「Sydney嬢にも約束した報酬をお支払いします。ご自分の取り分については心配なく」 ミュージアムの展示品の幾つかはSydneyが発見した品なのだそう。彼女が盗掘屋を始めたのはAbraham老人に拾った古文書を持ち込んだのがきっかけで、以後、飲み代を稼ぐためにコレクションの充実に協力してきた。二人の付き合いは古いのだ。Sydneyは報酬をかっさらうように受け取ると、数えもせずに出口へ向かい、Abraham老人はただそれをニコニコと眺めているだけだった。 「あぁ?宣言書は持ち帰ったし、分け前で飲みにでもいくさ」 「ここでお別れ?」 彼女のほど銃の扱いに長けたものは希だ。もうしばらく付き合わないかと誘ってみたが、Sydneyはあっさり袖に。廃墟を彷徨くのは飽きた、当面は酔っぱらって暮らすんですと。実に駄目女らしい返答だが、少し間をおいて「お誘いは嬉しい」と珍しく素直に笑って付け足した。 「何か用が出来たらUnderworldで捜しなよ。大体は飲んだくれてる。Ghoulは粉かけてこないんでね」 「そう。それじゃお元気で」 やはりぶっきらぼうに片手を軽く掲げ、振り返ることなく彼女は去った。
by yamanobe26
| 2009-10-23 15:36
| Fallout3日記
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