カテゴリ
ご注意 Simらし本編 Simらしスナップ Sims2使用素材 Fallout3日記 Index Fallout3日記 Oblivion日記 Index Oblivion日記本編 Oblivion日記外伝 Oblivion日記SI Oblivion日記MOD編 Oblivion日記W Skyrim日記 Index Skyrim日記 その他のジャンル
最新の記事
|
クエスト名『Agatha's Song 5』
“これまでのところ、実験はプラン通りに進行中だ。居住者は館内スピーカーから流れる極超低周波のホワイトノイズの影響下に置かれている。防音仕様のスタジオと音楽家を利用するか…ハ!Vault-Tec社の選考は賞賛に値するな” 風鳴りのように低い音が耳元で響く。気にしなければ、全く気にならない程度の。 Vault-Tec社の“社会保存プログラム”はVault施設が核戦争や細菌戦争から人命を護り、破壊された環境を改善する研究施設としての役割を担うと謳っている。Agathaさんの話だと、ここVault 92は芸術を後世に残す為に建造されたそうだが、ホロテープを吹き込んだProfessor Malleusの口調はVault-Tec社に対する嫌みが滲み出ていた。 Mirelurksが棲みついてるってことは、このVaultの何処が浸水していることを意味する。あーやだやだ、蟹は嫌い。 “指示に従い、ホワイトノイズの放送設備を音響区画からバイパスしてVault館内の全スピーカーに直接接続した。我々はこれよりVault-Tec Confidential Plan 略称WNMSCE、ホワイトノイズ心理的暗示戦闘実験を開始する。検証はProfessor Malleusの率いる三名のチームが担当し、間もなく具体的な結果が示されるだろう。また、ホワイトノイズを制御室からも発生させられるよう、エンジニアを派遣してある。これらの端末のパスワードはUIY2249だ” ラボで実験の責任者Professor Malleusが残した多数のホロテープを回収した。コントロールルームにある管理官の端末ログと照らし合わせるとVault 92で行われた実験の全容が浮かび上がる。 WNMSCE、ホワイトノイズ心理的暗示戦闘実験。名称からしてB級色が漂ってますな。身も蓋もない言い方をすると、Malleus先生がやったのは大規模な催眠テープの押し売り。ホワイトノイズを強制的に長時間聞かせられた居住者は時折トランス状態に陥り、その間に刷り込みを行った場合、100%の確率で洗脳が可能だとProfessor Malleusは報告している。その結果を踏まえ、管理官はProfessorとは別にVault-Tec社からの要請、つまり軍からの指示で被験者たちをより好戦的な性格に変える暗示を加えた。閉鎖空間でそんな刷り込みをしたらどうなるのか子供にでも予想がつくはずだが、この管理官は想像力が著しく欠如していたらしい。間もなく住民の半数が暴動を起こして殺し合いを始め、Vaultは放棄された。 思考が明後日の方向を向いており、ヌラリと現れた人影に腰が抜けそうなほど驚いた。 飛び散った肉片は白身のソフトシェル、最高級の蟹肉。 …蟹?????? 本日一番の衝撃です。このキモイ生き物にはしっかり背骨がある。つまりなんだ、蟹が無脊椎動物から半魚人まで進化した…いや、蟹が外骨格やめたらもう蟹じゃないだろうし、鰭までついてるってことは魚類なのかしら。…そのうち喋ったりして、「我々は蟹人間だ」とか。 ミュータント、グール、吸血鬼に半魚人。世界ははたして何処へ向かってるやら。一つ訂正しよう。私は蟹が嫌いじゃない。大嫌いだ。 ミキサールームの端末でスタジオの扉を開け、中へ飛び込んだ。 与圧された特殊ケースに収められた赤いヴァイオリン。Agathaさんから渡された写真とも一致します。これこそ彼女のご先祖様愛用の名器Stradivarius "Soil "。見たところケースに損傷はなく、保存状態も問題はなさそう。おし!Agathaさんも首を長くして待ってる。早く届けてあげよう。 道中、唐突にガイガーカウンターが鳴りだした。汚染地帯…水辺でもないのに? 「ちょっと見てくる、そこにいて」 眼前に出現したのは丘の中腹に突き刺さった巨大なマシン。尾翼とテールノズルがあるってことは…航空機? 水平翼のない直径20m前後の円盤状の乗り物…この眼で見ても信じられませんが、軍の秘密兵器でも映画の大道具でもなく、正真正銘のUFOです。 マンガだ…いや、本物だけど。率直に言ってエイリアンの姿はレトロなコミック画そのまんま。余りにまんますぎて初めて見た気がこれっぽちもしない。銀色の安手な宇宙服に身を包む小柄な体躯、緑色の皮膚、禿頭の老人顔、吸盤付き三本指。半魚人といい、だんだん現実と空想の境界が曖昧になって来てるのを痛切に感じるなぁ… 「あら、あら‥なんてことでしょう!それを見せて頂戴!」 「どうぞ」 食べかけのパンを放りだした手を拭い、差し出されたケースを震える指で慎重に開く。ブシュっとエアが漏れ、左右に向かい合う木目模様を赤いニスで彩る優美な曲面が現れた。 「まぁ‥綺麗ねぇ、想像していたよりずっと」 歳は二回り以上離れようと、知っているのは共に岩と錆び付いた鉄の世界のみ。Agathaさん同様、私も知らず溜息が出ていた。 「‥あれ、なんで?」 自然と瞳が潤んでくる。見ると夫人の両の眼も光を湛えていた。科学や兵器ばかりが文明か。先祖の遺品であるのは勿論、このヴァイオリンは人々が遠い昔に失った豊かさの欠片だ。人間が戦争の為に切り捨てた部分は決して小さくない。 「ありがとうじゃ済まないわね、何か貴方の苦労に見合うお礼が出来ればいいのだけれど‥」 謝礼に悩むAgathaさんに「時々、演奏を聴かせて下さい」と頼んでみた。今時はヴァイオリンの生演奏を拝聴する機会なぞない。瓶の蓋では買えない贅沢です。それなら何時でも聴けるようにと、夫人はラジオ放送のチャンネルも教えてくれた。 「書き方は憶えてるし、書き留める五線紙があれば大丈夫よ」 「ホロテープでは?」 「周りをご覧なさいな。パソコンやハイテク製品があるように見える?夫も私もそんな無用の長物は持たなかった。一番の高級品はそのラジオセットだけど、それにしたって爆弾が落ちる前から骨董だったのよ」 これ以上ない立派な楽器は戻ってきました。でも、Agathaさんが弾く曲は彼女の頭の中にあるだけで他にはない。いつかヴァイオリン奏者を志す者が現れても、その時音楽はまた過去の遺物となっているかもしれない。彼女のレパートリーは後世に伝える価値がある。 Agathaさんも音楽を未来へ繋ぐささやかな試みに賛同してくれたのだが、彼女はハイテクアレルギー。曲を残すのに最適かつ王道は音符を書き記すことだとおっしゃる。そこで五線紙の出番。フム、それこそVault 92には音楽家が沢山いた。探せば出てくるかも。 「いや、でも蟹はなァ…まてよ、博物館や学校を漁るって手も…」 「あらまぁ、この娘ったら。見つかったときでいいのよ。ゆっくりしておいきなさい」 再び旅の算段を始めた私を笑い、Agathaさんは"Soil "を手に腰を上げた。 “Thrrreeee Dooooggg!!!俺だ、みんな聞いてるかァ?今日もD.C.は地獄の一丁目、堅牢な塹壕に護られながらお届するぞォ。生きるって大変だよなァ” “さぁて、お待ちかね。孤独な放浪者ことVaultから来た『彼奴』は今までもいろいろ楽しませてくれたが、今回はとびきりだ。知り合いの情報によれば、『彼奴』はかなりデンジャーな遠足に出た。探し物はァ…効果音よろしく、ダダダダ、ジャーン!なんとヴァイオリンだ” “勿論!そんじょそこらのヴァイオリンじゃァないぞ、子供たち。Stradivariusって知ってるか?ヴァイオリンの最高傑作の一つだ、憶えとけよ” “ここからが大事だ。そのヴァイオリンはある老婦人に預けられた、名はAgatha。彼女は本当に美しい音楽を流す自前の放送局を持っている” “Agatha、愛してるぜ。いつまでも演奏を聞かせてくれ、姉弟” “それと…聞いてるか、Vaultの娘。お前さんはWastelandがよりマシなところになる手助けをしてくれた” “深謝する、My friend”
by yamanobe26
| 2009-07-13 12:59
| Fallout3日記
|
ファン申請 |
||