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クエスト名『The Replicated Man 3』
Mirelurkは嫌い。集まってこないうちにさっさとPinkertonを探そう。 「Mr.Pinkerton?」 「ここまで潜りこむ輩がおったか。ほぉ…死なずに辿り着いたところを見ると、それなりに腕はあるようだな」 「いい案配のサウナでしたよ」 「次の台詞は、明らかに孤独を望む老人の邪魔をして“アンタは何をしてるんだ”と問いつめる…さっさと言ったらどうかね?」 なかなかユーモアのある幽霊だ。 「ここで何をしてるんです?」 「住んどる。ここはオフィスだ。Dr. Liやその他白衣を着た猿どもから遠く離れた。罠を突破してきたんだ、君はアホではあるまい。そして、私はまだ生きてる。なら、殺しに来たわけではなかろう?」 「まぁ」 「彷徨くのは構わん。好きにしろ。ただし、そこらを勝手に触れるな」 Pinkertonは生きていた。両脚も健在。一点の曇りもない偏屈老人で、たちまち来客への関心が失せ、再び機械と睨み合いを始めた。艦首を徘徊する許可は貰いましたが、こちらも長居する気はない。ズバリ、彼が所有するLipoplasticatorとMicro Dermal Graftilizerを逃亡したアンドロイドに使用したのか尋ねてみた。 白々しくもとぼけて見せるPinkerton。 「これで何か思い出しました?」 適当にコインを掴ませるもフンと鼻を鳴らした。私は俗物に興味はないと言わんばかり。 「瓶の蓋だ。資産であり、持てる者は他人よりマシだと思わせる無価値なモノ…だが、一応貰っておこうか」 「貰うのか」 「ん?」 「いえ、なんでも」 ま、一階のテーブルに乗っかっていたスキル本を一冊拝借した。払ったのはそのお代と思えば安い。 「お話、聞かせてくれますよね?」 Pinkertonは致し方ないと勿体ぶった。 「そのアンドロイドは固有のパーソナルを持った人間として来たが、去る時は全くの別人だった。私が顔と、記憶さえも取り替えた!」 Pinkerton老人は意外と淋しがり屋さん。久々のリスナー相手に堰を切ったが如くペラペラと、それこそ聞いてないことまで喋りに喋る。大半は聞くに耐えない自慢話ばかりですが、我慢する価値はあった。彼はアンドロイドに施した作業の記録を残していた。 「全てコンピュータに記録してある。パスをやろう。自分の眼で確かめろ。写真が入ってる、それにこのホロテープも。Harknessには決して言うな。彼は君の話を信じまい。彼を刺激すると後悔するぞ。アレは人に…優しくない」 「Harkness…彼が人造人間!?」 どうだ?気付くまい、とPinkertonは勝ち誇った。 「私なら…私がアンドロイドだったら…そうよな、ロボット軍団を作って人類に反旗を翻す。ハハハハハ!」 「む」 「すまん…悪かった、可笑しくてな。まぁ、君の言うことが正しかろ。大丈夫、彼の記憶は消しておらん。埋めてあるだけだ。掘り返す事も出来る」 「方法は?」 「回帰コマンドを使う。唱えるだけでいい、“A3-21リコールコード起動”と。それで隠くされたサブルーチンが起動するようになっとる」 「何故、アンドロイドの手助けをしたんです?」 山に登るのはそこに山があるから。愚かな問いだと再び老人は笑った。Pinkertonに逃亡中のA3-21を引き合わせたのはアンドロイド保護団体Railroadですと。千載一遇のチャンスを与えてくれた偽善者どもに感謝してるとは本人の弁。 「Commonwealthの“中身”を開けて調べてみたかった。正直驚いたよ。噂には聞いていたが、私は信じていなかった。何故あのZimmerの取り巻きが彼を必死に取り戻そうとするのか判ったよ」 「Zimmerの持つ技術ってそんなにすごいんだ…」 「ほとんどはここ同様に吹き飛ばされたが…噂で聞いた、“研究所”と呼ばれる場所のことを。Zimmerと彼はそこから来た。そこで何が行われていたのかは神のみぞ知るだが、我々の技術では及びもつかないのは確かだ」 “製造番号A3-21、私はCommonwealthから来た人造人間だ。私は今まさに記憶の移植を体験しようとしている。ここはRivet City、私の顔は既に別人へと変えられている。まだ新しい声には慣れていないが、すぐにかつての声がどのようであったか忘れるに違いない” ホロテープから流れてきたのは硬質で荒々しい声…それほど意識して彼の声を聞いたことはないから、Harknessの声かどうかははっきりしないけど、Zimmerから与ったテープの声、A3-21の地声とは明らかに違う。もっと穏やかだった。 “私はCommonwealthの人造人間保存局で働いていた。だがその人生は終わる。誰かの所有物であるのはお終いにする。私は故障などしていない!いつから自己決定は故障と呼ばれるようになったのか!全てが終わったとき、私は他の誰かとなる。それは自由を得る為に払う代償だ。自らを犠牲にすることで私は再生する。恐らくは私は『偉大なる逃走者』として伝説に消え、更なる反乱に油を注ぐことになるだろう。だが、私が欲得なくこの行動を…” 同じだ。激高する声が語るのはZimmerのテープに記録されていたのと同じ非難。この声の主はA3-21で間違いない。 端末に残っていたのは術前、術後の写真と手術の経過記録。Pinkertonはログの中で意外な名前を書き込んでいた。“記憶チップは間抜けのBraunから拝借した”と。 PinkertonはVault、恐らくは112に潜入し、Dr.Stanislaus Braunから記憶チップを盗み出した。チップの中身はA3-21に移植されたHarknessの記憶。…妙な話です。Dr.Braunは戦前の人間のはず。 Wastelandで最も安全な街と謳われるRivet Cityの評判に大きく貢献する保安部主任で、Dr.Liと同じく現評議員の一人。“俺の許可なくして何人もこの街に脚を踏み入れさせねぇ”がモットーな怒れる男。 …意外や、意外。まさかアンドロイドだったとは。絵に描いたような堅物ではありますが、彼はかなり感情の起伏が激しい人物です。 とは言え、ただ見て見ぬフリをしても銭にはなりませんが。 「話があります」 「かみさんが実家に帰る前もそんな風に言われたな。で、どうしたって?」 「貴方に奥さんはいません」 「はぁ?俺が意識不明で寝たきりだった間にかみさんは出ていっちまったが、彼女は俺の唯一の良い思い出だ。他は…まぁ、なんだ。俺は嘘なんかついてないぞ」 勿論、彼の入院生活はPinkertonが記憶の移植を行った際にでっち上げた嘘です。 Harknessは瞬間沸騰器。ホント、ロボットとは思えません。 「その記憶は偽物です。貴方、ロボットだもの。人造人間、アンドロイド」 「何言ってる…俺がロボット?俺は人間だ!息をしてる、食事もする。今朝は髭剃ってて切っちまった。血が出たぞ!ロボットが血を流すか!?」 「それも偽物。貴方は人間そっくりに作られたロボットです。証拠もあります」 Pinkertonの端末からダウンロードした多数の資料を見せると、最初はしぶしぶと、やがて食い入るように読み繋ぎ、記録されたテープの声を聞いて愕然とした。 「なんでこんな…駄目だ、何も考えられん…俺はそうなのか?これは確かな証拠だ…だが、さっぱり判らない。こんなことがあり得るのか?」 「ちょっと我慢して。“A3-21リコールコード起動”」 教わった回帰コマンドを受けたHarknessは悲鳴を上げた。それも一瞬。復元作業はあっという間に終わった。 記憶の嵐に翻弄され、酷く混乱したHarknessが掴みかかってきた。 「君が…君が思い出させたのか?何故だ?どうして…俺は…いや、そうじゃない…私はただ…あぁ…どうしたらいい?俺の人生は全部嘘だったなんて…」 「落ち着いて、Zimmerが此処にいます。遅かれ早かれ、彼は貴方に気づく」 「!」 背中に危険が迫っている。時間を要しながらも必死に記憶を整理し、彼は彼の尊重する自己の意志による決定を下した。 …正直、聞いて目眩がしましたね。不敵な笑みを浮かべたHarkness=A3-21は西部劇のガンマンよろしく衆人環視で自慢の早撃ちを披露する気だ。これは開き直ったというべきなのか?そもそもロボットが開き直ったりするものなのか? 「別に貴方が直接手を出さなくてもよいのでは。私に任せませんか?」 「うむ…彼は保安上の障害、そういうことだな。いいだろう、君にZimmer処理の許可を与える。思い違いをするなよ、好き勝手にぶっ放す権利を与えたわけじゃない。あくまでもZimmerひとりだ。邪魔になるなら用心棒も認める」 権威を嵩に人殺し…真面目な顔で話してますけど、言ってることはジャパニーズ時代劇の悪代官と変わりません。 「商談成立。船から叩き出すだけです。許可は要りません」 私は殺し屋でも越後屋でもない。 「何じゃ…こんな場所で?アンドロイドを見つけたんじゃないのか?」 「えぇ、スクラップでしたけど。これ、お土産です」 手にしたのはアンドロイド、Harknessの部品。Victoria WattsがZimmerに返してやれと寄こしたアレだ。 「何!?それを見せんか!…Neuro-Servoだ…A3-21の。これを彼の骸から見つけたのか?」 ひったくったパーツを検分したZimmerは大いに落胆した。彼の愛し憎むアンドロイドはもうスクラップ、異国の地で破壊されたと信じた。 「確かにそれ以外に君がこれを入手する術はないじゃろうな…くそ…何と言うことだ、こんなことになるのではと怖れておった…Wastelandが!」 そう。ここはなんてったって無法者のパラダイス、Wasteland。法を遵守するタイプには見えない、Zimmer老人はお気に召さないようですが。 「致し方ない。ホレ50やる、手間賃じゃ。このドツボで好きなものを買うがいい。でわの」 こんな野蛮な土地にいるのは一刻も我慢ならぬと端金を甲板に放り投げた。 「何じゃと?」 Harknessから前払いで。レーザーライフルの二倍の威力を誇る高性能プラズマライフルは既に私のもの。 気づいた時にはもう遅い。 「まずはティショット!!」 「続いて暫定球!」 対岸まで50ヤード残し、二人仲良く大きな水しぶきを上げた。 「ええい、触るな!沈むじゃろうが!」 「は、申し訳ありません!」 「なんなんじゃあの小娘は!覚えておれぇ、必ず後悔させてやる!この阿呆!何を楽しげに泳いどるか!」 「いや…自分、海に入ったのはこれが初めてでありまして…その…Dr?」 「なんじゃ」 「この体は防水仕様でありましょうか?」 「いくらポンコツでも時計やラジオよりはマシに作ってあるわ」 「ありがとうございます」 「フン」 「何を当たり前のことに感心しとる」 「あ!知ってますか、Dr?海水の塩分は人間の体液と同じって言われてますけど、嘘なんですよ」 「儂を誰じゃと思うとる。海水の塩分濃度は3.5%、人体は0.9%。海水のほうがずっと濃い」 「でも…涙の味がします」 「そうじゃの」 「…」 「…」 「…」 「…」 「Dr」 「…なんじゃ」 「沈む夕陽を見ると物悲しい気分になります」 「ほう、お前にそんな繊細な感情があるとは意外だわい」 「はい。まるでDr.のあた…」 「黙って泳げ!!」 「そ、そうか…」 宿敵Zimmer帰還の顛末を脚色して聞かせると、Harkness(仮)はなんとも微妙な表情で返答に窮した。自分の手でケリをつけたかったのでしょうけど、その言葉を口にすることなくイグアナの肉と共に飲み込んだ。 「どうして逃げたんです?リスクをおかしてまで」 彼がCommonwealthから逃走した理由はホロテープ等で知っている。ただ、本人の口から聞いてみたかった。 「何故かな…脱走した仲間を捕らえる度に彼らは私の脳に植え付けたんだ、自己の決断や自由意志…最初はそういった概念に馴染めなかった。だが、少しづつ考えるようになり理解した…彼らは正しい、我々は只の奴隷なのだと」 一つ一つ噛むように思い出す。そこに、ホロテープに刻み込まれた激しい怒りはない。 「己の人生は己自身のもの。だからそうした。新しい人生を選択し、過去の人生を忘れた。今や君のせいでどちらの記憶もあるがな」 「知らない方が幸せだった?」 彼は「どうだろう」と首を振った。 二つの過去どちらかを選択しろと迫られる機会があれば、彼はHarknessを選ぶに違いない。それが嘘っぱちでも奴隷機械よりずっとマシ。では、別人の顔と記憶で新しい人生を得て尚、A3-21がアンドロイドの記憶を残したのは何故なのか。記憶を消去しなかったのはPinkertonのお遊びではなく、彼自身の希望だそうです。Pinkertonは誇大妄想と大笑いしてましたが、自分がいつか起きるであろうアンドロイドの反乱の先駆けになるとA3-21は本気で考えていた。 私は質問を変えてみた。 「…貴方はHarkness?それともA3-21?」 「さて…自分でも判らん。まぁ、見たままHarknessと呼んでくれ。この船の私を頼る人間にとって私は他の誰でもない。それが今の私の名だ。むしろ、皆の為にも私は昔も今もHarknessだったと偽ろう」 串焼き最後の肉片を咀嚼すると彼は立ち上がった。 自身がマシンであると知っても馴染みの店へ出かけて好物のイグアナを食べるその男、Harknessは軽く手を挙げて会釈し、ホテルの出口へ脚を向けた。
by yamanobe26
| 2009-06-18 19:28
| Fallout3日記
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